手残り不動産の実質利回り

築39年の木造アパートを4年持って売った。税後1.5倍だが、物件自体は8%しか上がっていない

ロフティチェリーNo.1(千葉県船橋市海神 / 木造2階建 6戸 / 築39年)

原資産の値上がり
+8%
税後総利益
約464万円
税前IRR
15.4%

2022年1月に3,900万円で買った木造アパートを、2026年5月に4,200万円で売った。 保有期間は4年4ヶ月。法人で持っていた。

数字だけ並べると悪くない。ただ、この物件が儲かった話として読まれると困るので、 内訳を分解しておく。

成績

項目 金額
自己資金投入 885万円(借換費用94万を含めると979万)
売却価格 4,200万円
保有中のCF ≒543万円(うち377万は推定)
税前総利益 ≒839万円
税後総利益 ≒464万円
自己資金リターン +86%(税前)/+47%(税後)
IRR 15.4%(税前)/9〜10%(税後)

4年半で約1.5倍。悪い成績ではない。

物件自体は8%しか上がっていない

倍率が大きく見えるのは、3,900万円の資産を885万円の自己資金で持ったからだ。

物件そのものの値動きは 3,900万 → 4,200万で +8%。4年で8%である。 これだけ見れば「ふーん」という話でしかない。

レバレッジが、原資産の8%を自己資金ベースの47%に増幅している。 「不動産で資産を1.5倍にした」ではなく、「8%の値上がりを借金の力で増幅した」が実態だ。

増幅されるのは損失も同じで、値下がりしていれば自己資金は同じ倍率で溶けていた。

手残りは何でできているか

税前の手残り1,274万円を分解する。

内訳 金額
自己資金の回収 720万円
値上がり分 300万円
元本返済による残債の減少 404万円
売却費用 −161万円

いちばん大きいのは値上がりではなく、元本返済の404万円だ。 当初3,180万円の借入が、売却時には2,776万円まで減っている。この404万円は、 入居者の家賃が返してくれた分にあたる。

ただし、同じ期間に返済総額794万円のうち391万円は利息として消えている。 借金で買うというのは、元本が資産に変わる一方で、ほぼ同額を金利として払うということだった。

運用では残らなかった

家賃は月32万円入る。表面利回りは9.85%。それでも 実データのある10ヶ月の手残りは14万円しかない。 月平均1.4万円だ。

2025年2月には原状回復で107万円が飛び、 6戸のうち1戸は4ヶ月分の家賃を滞納していた。

儲けの実体は家賃ではなく、売却益に全振りだった。 「持っているだけで毎月入ってくる」という話ではまったくなかった。

表に出てこないコスト

計算に入れ忘れていたものがある。法人の維持費だ。

税理士報酬や均等割で、年に40〜70万円かかる。4年4ヶ月なら170〜300万円になる。 この物件だけの費用ではなく法人全体の固定費だが、税後利益464万円と並べると 無視できる大きさではない。

物件ごとの利回りを計算していると、この手の費用は視界に入らない。

株と比べるとどうだったか

同じ885万円をS&P500に入れていたら、2022年から2026年の期間なら円安も乗って 400〜500万円の利益になっていた計算だ。税後464万円とほぼ同水準である。

不動産が互角に持ち込めたのは、レバレッジを使ったからだ。 レバレッジなしで比べれば株の圧勝になる。そこに管理の手間、修繕リスク、 滞納の督促、売却交渉の時間を足すと、割に合っていたかは微妙になる。

それでも不動産に残る優位性はある。融資枠という社会的信用は株では作れないし、 法人で減価償却を使える点も違う。ただ、「不動産が有利」ではなく「使い分け」が 正しい理解だった。

それでも売れたから及第点だった

この投資が及第点で終わったのは、売却が成立したからだ。

築39年の木造・6戸・船橋という条件は、買い手が次の投資家に限られる。 金利は保有中に3.15%から3.40%へ上がり、相手の融資条件も厳しくなっていた。 売れなければ、維持コストと金利負担が膨らむだけの構造だった。

いちばん効いた意思決定は、買い方ではなく売り時だった。 築古は持つほど不利になる。出口の見込みとセットでなければ、 運用で残らない物件を持ち続ける理由がない。

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