手残り不動産の実質利回り

土地と建物の内訳が分からないまま売る段になった。按分が10ポイント違うと税額が128万円動く

ロフティチェリーNo.1(千葉県船橋市海神 / 木造2階建 6戸 / 築39年)

取得価額の土地・建物内訳
未確認
按分10ポイントあたりの税額
1,287,000円
仮定にもとづく税額の概算
約375万円

売却の試算表を作っていて、埋まらない欄が出た。土地の簿価だ。

3,900万円で買った。そのうち土地がいくらで、建物がいくらだったのか。 売買契約書を見ても、自分の記憶をたどっても、その内訳が確認できない。

書類は残っている。按分だけが無い

取得時の書類は手元にある。金額は1円単位で分かる。

項目 金額
購入価格 39,000,000
仲介手数料 1,253,000
登記費用 528,485
固定資産税清算金 64,684
取得費合計(概算) 40,846,169

諸費用そのものについては別の記事に書いた。 問題は、この表の1行目である。39,000,000円が、土地と建物にどう割り振られていたのかだけが分からない。

按分が決まらないと、簿価が決まらない

土地と建物では、税務上の扱いがまったく違う。

減価償却 売却時の簿価
土地 できない 取得価額のまま残る
建物 できる 償却した分だけ減る

この物件は木造で、法定耐用年数は22年。購入時点で築約36年あったので耐用年数を超過しており、 中古取得時の耐用年数は22年 × 20% = 4年になる。2022年1月に取得しているので、 2026年1月ごろに建物簿価はほぼゼロまで償却されている計算だ。

つまり売却時に簿価として残っているのは、実質的に土地の分だけになる。 建物に多く割り振っていたなら4年で経費にできていて、土地に多く割り振っていたなら まるごと簿価として残っている。 同じ3,900万円でも、意味が正反対になる。

10ポイントで128万円動く

試算では土地7割・建物3割と仮定して計算した。根拠のある数字ではなく、置いただけの仮定だ。

項目 金額
売却価格 42,000,000
土地簿価(39,000,000 × 70%) −27,300,000
取得関連費用 −1,846,169
売却費用 −1,492,000
課税対象譲渡益(概算) ≒ 11,361,831
法人税等(実効税率33%で概算) ≒ −3,749,404

この仮定を動かすと、税額と手残りがどこまで振れるかを並べる。 建物簿価はいずれもゼロとして計算している。

土地の按分 譲渡益(概算) 法人税等(概算) 税引後の手残り
50% 19,161,831 6,323,404 6,419,800
60% 15,261,831 5,036,404 7,706,800
70%(仮定) 11,361,831 3,749,404 8,993,800
80% 7,461,831 2,462,404 10,280,800
90% 3,561,831 1,175,404 11,567,800

按分が10ポイント動くごとに、税額は1,287,000円動く。 50%と90%の間では5,148,000円の差になる。

売る値段も、売る相手も、売る時期も同じだ。動いているのは、 4年前に決まっていたはずの内訳ひとつだけである。それで手残りが数百万円変わる。

なお、いずれも仮定にもとづく概算であって、確定した税額ではない。 実効税率33%も概算で置いた数字だ。正確な税務判断は税理士に確認が必要になる。

保有中の税金も、同じ理由で確定していない

按分は出口だけの話ではない。建物割合が大きければ、保有中の減価償却費も大きい。 その分は毎年の所得を圧縮していたはずで、売却時に税額が増える按分は、 保有中の税額が減っていた按分でもある。単純に得か損かではなく、いつ払うかの差でもある。

ただ、この物件は2022年1月〜2024年7月の31ヶ月分のPLが手元にない。 償却費がいくら計上されていたのかを自分で確認できない以上、 その打ち消し合いがどれくらいだったのかも分からない。

分からないのは按分だけではない

売却試算を作る過程で、確認できていない項目を優先度つきで洗い出した。

優先度 項目
★★★ 土地・建物の取得価額内訳
★★★ 建物の減価償却累計額(現在の建物簿価)
★★ 売却時の繰上返済手数料(巣鴨信用金庫)
★★ 2022-01〜2024-07のPLデータ
★ 不動産取得税の支払い額
★ 購入後の資本的支出

上2つが★★★なのは、どちらも欠けたままだと譲渡益が確定しないからだ。 按分が分からず、償却累計額も分からないので、簿価は上下から挟めていない。

これから確認するとすれば、売買契約書の記載、決算書の固定資産台帳、 取得時の固定資産税評価額による按分あたりになる。どれも取りに行けば出てくるはずのもので、 買ったときに一度確認しておけば済んでいた。

「記録が消えた」のではなく「最初から見ていなかった」

似た話を金利の記事に書いた。あちらは、 届いていた書類を保存しなかったせいで自分の金利すら確定できなくなったという話だ。 過去に存在した記録が失われたという時間軸になる。

今回は逆で、契約の時点で確認しなかった項目が、4年後に税額として出てきた。 書類が消えたわけではない。買うときに利回りと融資条件しか見ておらず、 その中に「土地と建物の内訳」という欄が視界に入っていなかっただけだ。

買う瞬間に効かない数字ほど、出口まで確認されないまま残る。按分はその典型だった。 売買契約書に内訳が書かれていない取引は珍しくないが、書かれていないなら そのとき決めて記録しておく必要がある項目だったということになる。

まとめ

  • 3,900万円の土地・建物内訳を確認しておらず、売却時の簿価が確定しない
  • 土地7割・建物3割は仮定でしかなく、税額の概算約375万円もその上に乗っている
  • 按分が10ポイント違うと税額が1,287,000円動く。50%と90%では514万円の差になる
  • 建物は4年で償却しきる計算なので、按分の差はそのまま簿価の差として出口に残る
  • 数字はすべて仮定にもとづく概算であり、税務判断は税理士に確認する

シミュレーターは税引前で計算している。法人で持つなら、出口の手残りは この按分ひとつで数百万円ぶれる。買う前に決める数字だった。

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