築36年の木造は4年で償却が終わる。売却はその4ヶ月後だった
ロフティチェリーNo.1(千葉県船橋市海神 / 木造2階建 6戸 / 築39年)
- 中古取得時の耐用年数
- 4年
- 建物簿価がほぼゼロになる時期
- 2026年1月頃
- 譲渡益の法人税等(概算)
- 約375万円
築古の木造を法人で買うと、減価償却が短い期間に集中する。 これは節税の話として語られることが多いが、短いということは、すぐ終わるということでもある。
自分の物件では、その「終わり」が売却の4ヶ月前に来ていた。
なぜ4年なのか
木造の法定耐用年数は22年だ。この物件の築年月は1986年9月で、取得したのは2022年1月。 購入時点ですでに築約36年あり、法定耐用年数を超過していた。
耐用年数を過ぎた中古を取得した場合、簡便法では法定耐用年数の20%が償却期間になる。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 構造 | 木造スレート葺 地上2階 |
| 木造の法定耐用年数 | 22年 |
| 購入時の築年数 | 約36年(耐用年数超過) |
| 中古取得時の耐用年数 | 22年 × 20% = 4年 |
22年で割るはずだったものを4年で割る。1年あたりの償却費は5倍以上になる。 築古が「節税になる」と言われるのはここだ。
いつ終わるか
取得が2022年1月なので、4年で償却するなら終わりは決まっている。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2022年1月 | 取得(築約36年) |
| 2022年〜2025年 | 建物を4年で償却 |
| 2026年1月頃 | 建物簿価がほぼゼロ |
| 2026年5月 | 売却(予定) |
売却したのは2026年5月なので、償却が終わった直後に売っている。
先に書いておくと、売却の理由はこれひとつではない。築古の修繕、金利上昇、買い手の融資環境が 重なった結果として時期が決まっている。償却切れを狙って4年で売ったという話ではなく、 結果として一致したというだけだ。ただ、一致していたという事実は残る。
償却が切れると何が変わるか
現金の動きは何も変わらない。変わるのは課税所得のほうだ。
減価償却費は現金が出ていかないのに経費になる。逆に、ローンの元本返済は 現金が出ていくのに経費にならない。この二つが逆転する地点がデッドクロスと呼ばれる。
土地・建物の按分が確認できていないため正確な償却額は出せないが、 売却試算と同じく建物を取得価格の3割と仮定した場合の概算はこうなる。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 建物取得価額(39,000,000 × 30%と仮定) | 11,700,000 |
| 償却年数 | 4年 |
| 年あたりの償却費 | 2,925,000 |
| 月あたり | 243,750 |
一方で、元本の返済は当初3,180万円が売却時に2,776万円まで減っているので、 4年4ヶ月で約404万円、年に約93万円のペースだ。
年292万円の経費が消えて、年93万円の経費にならない支出だけが残る。 年間の手残りが約146万円(税前)の物件で、 同じ手残りのまま課税所得だけが増える構造になる。
5年目以降も持ち続けるなら、ここから先は税引後の手残りが目に見えて薄くなる区間だった。
出口では逆に働く
保有中に効いていた償却は、売るときには反対向きに効く。
建物簿価がゼロに近いということは、売却価格から差し引ける取得費が土地分しか残っていない ということだ。償却で落としてきた分だけ、譲渡益が大きく出る。
同じ「土地7割・建物3割」の仮定で計算した概算がこれになる。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却価格 | 42,000,000 |
| 土地簿価(39,000,000 × 70%と仮定) | −27,300,000 |
| 取得関連費用(仲介・登記・固定資産税清算金) | −1,846,169 |
| 売却費用(仲介・抹消登記・印紙) | −1,492,000 |
| 課税対象譲渡益(概算) | 11,361,831 |
| 法人税等(実効税率33%概算) | −3,749,404 |
保有法人は合同会社ozで、法人の場合は売却益が通常の法人所得として課税される。 譲渡益の税だけで約375万円の概算になる。
保有中に減った税と、出口で増えた税は別の年度に発生する。 節税というより、払う時期を4年ぶん後ろにずらしただけという見方もできる。
この数字は確定していない
上の金額はすべて土地7割・建物3割という仮定にもとづく概算だ。
- 土地・建物の取得価額の内訳を確認できていない。 売買契約書か固定資産税評価額で 按分する必要があるが、手元で確定できていない
- 建物の減価償却累計額(現在の建物簿価)も未確認だ。法人決算書と法人税申告書に 載っているはずの数字を、この試算の時点では拾えていない
按分の比率が変われば、譲渡益も税額も動く。建物の比率が上がれば保有中の償却は増えるが、 そのぶん出口の簿価は減り譲渡益は増える。どちらに転んでも総額の見え方が変わるので、 上の375万円を確定値として読まないでほしい。
そして当然だが、正確な税務判断は税理士に確認したほうがいい。 自分もこの試算のまま処理したわけではない。
まとめ
- 木造で築22年超を買うと、中古取得時の耐用年数は22年 × 20% = 4年になる
- 2022年1月取得なので、2026年1月頃に建物簿価がほぼゼロになる計算だった
- 償却が切れると、現金の手残りは同じまま課税所得だけが増える
- 出口では建物簿価がゼロに近いぶん譲渡益が大きく出る。概算で譲渡益1,136万円・税375万円
- ただし土地・建物の按分は未確認で、これらはすべて仮定にもとづく概算でしかない
築古の短い償却は、税を消すのではなく前倒しするものだった。 シミュレーターは税引前の手残りまでしか出していないが、 保有5年目以降を考えるなら、この償却切れを別に見ておいたほうがいい。